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今回は平成30年度理科について掘り下げた記事です。
平均点が発表になった後の記事です。
正答率からみる狙い問題
理科の平均点は50点満点で19.1点でした。
昨年(平成29年度)が17.1点、一昨年(平成28年度)が19.7点だったので、一昨年のレベルに戻ったと考えられます。
まぁ、2年前から難しくなったので、難しいことは全く変わっていません。
何度も記事にしていますが、単純に用語を暗記し、それを答えるだけの問題は皆無です。
用語が出題されるにしても、逆のスタイル。つまり、用語を答えるのではなく、用語の意味を説明するタイプの問題が出る、ということです。考え、表現するタイプの問題ばかりが並んでいるとご理解ください。
大問の概要を簡単に記述すると
大問1が「動物」に関する問題(生物分野)
大問2が「地震」についての問題(地学分野)
大問3が「力とエネルギー」に関連した問題(物理分野)
大問4が「化学変化・酸化」についての問題(化学分野)
このような内容でした。
昨年以上に、実験についての仮説・検証による要素が強かったという印象です。
そこで、平均点20点をとるための方策について、昨年同様正答率を見ながら考えることにします。
正答率が50%を超えている問題の特徴
今年は、正答率が半分を超えている設問が、6問ありました。
大問1-1 刺激を受けて反応するまでの順番を選択する(52.3%)
大問1-2(2) 音の水中での伝わり方を説明する語句を記述する(75.3%)
大問2-1 「震度」の説明をする(59.9%)
大問2-3 地震の波が伝わる速さを計算する(69.8%)
大問3-1 「支線が電柱を引く力」を作図する(53.9%)
大問4-1 下方置換法を用いるべき気体の性質を説明する(59.9%)
今回の場合、暗記した「用語側」ではなく「説明側」の出題に引っかかっていないことが特徴として挙げられます。いわゆるパターン暗記で、用語暗記のときに「双方向」に対策をすることがカギです。
また、計算問題と作図問題も、定期テストレベルの問題。定期テスト対策をしっかり積んでいれば、得点可能ということです。
この問題群をすべて解くと、11点が手に入ります。平均点まであと半分。
正答率が40%程度の問題の特徴
四捨五入して正答率が40%~50%になる問題はどうでしょうか。
大問1-3 暗室で行っても同じ結果になるものを選ぶ(38.2%)
大問2-3 4つの速さを速い順に並べたとき地震の波が何番目になるか答える(35.8%)
大問2-5 資料を見て印をした場所で地震が起きやすいと判断できる理由を説明する(39.3%)
大問3-2 電柱を引く力とつり合う力の向きを選ぶ(39.9%)
大問3-4 斜面の傾きを大きくした場合の結果のグラフを選ぶ(46.0%)
大問3-5(1) 自転車にはたらく力の大きさについての説明文を選ぶ(40.8%)
大問4-2(1) 水であることを確かめるための実験とその結果を説明する(37.6%)
大問4-2(2) 集気びんの中の線香の火がしばらくついていた理由を説明する(35.1%)
大問4-5 マグネシウムの燃焼のモデルをかく(39.8%)
このような9問が選ばれます。ここを全部突破すると、18点稼げます。先ほどの11点と合わせて29点。
平均点から考えると、他教科の点と合わせると難関校でも勝負ができそうな予感です。
ここでは、2つのパターンに分けられます。
大問3の3つと、大問4-2(1)、大問4-5は、いわゆる原理をきちんと理解して解く問題です。それゆえ、ある程度実験や観察の意味を理解しなければ、答えにたどり着くのは難しいと考えられます。
一方、大問1、大問2と、大問4-2(2)は、理解よりも与えられた情報をもとに考える問題です。現象の意味は押さえる必要がありますが、それ以上に資料が読み取れて、知識とつなぎ合わせられるかを問われます。
これだけ取れる問題があるのに…
なぜこんなに平均点が低いのだろうか。
受験生の3分の1しか解けない問題を「解きやすい」というのはどうかとは思いますが、それでも、そんなに難しいとは思えない内容で、平均点が20点を割り込んでしまうのは果たしてどういう意味があるのか。
これは、私は2つの理由があると考えています。
解く前に混乱している可能性
大したことはないんです。問われ方にちょっと変化がついています。
例えば、今年度の問題の場合。他県の知識重視の問題であれば
地震のゆれの程度を表すものをなんというか。
と問われる。これが、他県の説明重視型問題になると、
震度とマグニチュードのちがいを、「ゆれ」「規模」という語を用いて説明しなさい
という問題になります。
広島県は、もうひとひねり
次の会話文を読んで答えなさい。 (中略) そうだね。震度は観測地点における(X)を表しているよね。 (後略) 問 Xに当てはまる内容を簡潔に書きなさい
という風になります。
はじめに紹介した問題は、ただの知識問題。
次に紹介した問題は、多少理解力を試す問題。
最後の問題は、読解力と理解力を試す問題。
広島県の理科は、これが特徴です。ただの知識問題は出ませんが、知識の理解問題はたくさん出ます。一般的に、手数が多いほど、問題は難しくなります。
ですから、受験生は、その問題がわからないのではなく、そもそもそこにたどり着くまでにいろいろなことをさせられて、混乱している可能性があるわけです。
ですから、入試対策としては、一問一答を逆に行うことをオススメします。
答えを見て、問題を作ることが一つの近道かもしれませんね。
得意と苦手の分野偏りがひどい
先ほど説明に登場した、正答率の約40%以上の15問を、大問に分けてみると
大問1:3問 大問2:4問 大問3:4問 大問4:4問
と、見事にバランスが取れています。
つまり、取れるはずの29点分が、分野の得意不得意によって大幅に削られている可能性が大いにあるということです。
4つの分野がある以上、どうしても分野間に偏りは出てしまいますが、苦手な分野をいかに「耐えるか」が、入試突破のカギになることは言うまでもありません。
暗記をして、その「使いどころ」に集中して勉強できれば、理科の平均点超えは正直楽勝です。
難関高校受験者が取りこぼすと痛い問題
公開された資料には、「標準偏差」という数値があります。
これは、得点にどれだけばらつきがあるのかということを表す指標で、この数値が大きいほど、上位と下位の差が開いていると思ってください。
この標準偏差が、今年の理科の場合、昨年よりも大きい数字になっています。
つまり、今回の2点の平均点の上昇は、成績上位者が昨年よりも多く点数を取ったことで起こった現象だと考えられます。よって、難関高校受験者については、平均点が低いからといって、安心するのは少し待ってね、といっておきます。
難関高校受験者に、強く言いたいことは、その実験の方法と結果の「なぜ」を常に意識しておくことです。
例えば大問4の後半。ここは、「二酸化炭素の中で物が燃焼しないのか」を問われています。これは、普通学校の授業で取り扱うことはありません。
どう解くのか。カギは、会話文。
後半には、実験の結果が2つ登場します。このとき、文章中にある「小さなヒント」を見逃さないようにします。
今回は、『光沢のない白色の物質』と、『表面や内部に黒色の物質』の2点がヒント。光沢のない白色の物質は、酸化マグネシウムです。
一方、黒色の物質は出てくるのはなぜ?と考えたとき、今回の場合、実験前の物質が「マグネシウム」と「二酸化炭素」であることから、黒色の物質は炭素以外に考えられません。
このように、実験の結果を見て、「なぜこうなる?」といつも問うことで、暗記した知識の意味が見出せますし、さらに深い知識として頭に残すことができます。
難関校狙いの受験生は、こういった努力を積み重ねられるかが、理科で差をつけることにつながります。
対策の仕方まとめ
公立高校入試の理科対策のポイントは、知識を増やし、その使いどころを確実に押さえることです。
具体的に言えば
・地区トップ校以下狙いの受験生は、知識+αの問題をとれるように練習
・難関校狙いの受験生は、実験の方法と結果に注意すること
です。
理科は平均点こそ低いですが、やり方次第で30点以上をとることは可能です。そこに注意しながら勉強をしましょう。