管理者プロフィールはこちらから ⇒ 管理者のプロフィール
今回は、平成28年度分析の際に触れた、理科の傾向変更についてのお話です。
この年から、理科の大問が1つ増えました。
理科の大問が「1つ増える」
広島県の理科にかかわる学校・塾関係者の方々に、聞いてみたいなぁという話があって。
今回のテストは、大問が1つ「増えた」のでしょうか?「減った」のでしょうか?
表面上は、昨年の大問3つ構成から大問4つ構成へと変化している。
つまり、大問は1つ「増えた」ことになります。
しかしながら、昨年と今年の中身の比較をすると
【昨年度(平成27年度)まで】
大問1:物理・化学のいわゆる「1分野」の問題
大問2:生物・地学のいわゆる「2分野」の問題
大問3:環境問題を軸とした4分野横断のいわゆる「総合問題」
【今年度(平成28年度)】
大問1:化学の問題
大問2:生物の問題
大問3:物理の問題
大問4:地学の問題
昨年までは、物理と化学、生物と地学はセットで1つの大問でしたが、大問の中で2つに分かれていたので、実質はそれぞれ「大問2つ分」の量。
今年は、その大問2つ分が1つずつに分かれて、なおかつ昨年の大問3に当たる総合問題がなくなったので、中身からいくと大問が1つ「減った」ということになります。
実は近年、総合問題が単なる小問の「寄せ集め」のようになってきました。
以前は、環境問題を前面に押し出していましたが、現在はその傾向が弱まり、単なる暗記力勝負に成り下がっていた面があります。
一時期に比べて環境問題のブームが弱まり、原発の問題などかなり「デリケート」なテーマになり、問題には適さないという出題者側の判断が働いたのかもしれません。
実験問題に寄せていく理由
変化したのは、見た目の形式だけではありません。
昨年から徐々に、実験・観察を深く掘り下げる問題が増えてきました。
実験・観察の資料を見て、それに関する問題を解くもの。実験の方法、結果、考察。さらに日常生活への応用(っぽいこと)への発展。今年の場合、顕著に現れたのは大問1のカイロに関する問題や、大問3の浮力を用いたはかりの問題です。
生物・地学の問題に対しても、グラフを読んで答えさせる問題がしっかりと出題されています。
昨年までなら、大問2は「細胞分裂のイラスト」、大問4は「透明半球の図」くらいしか登場していないでしょう。そのくらい、結果や考察を追及する問題が増えてきた、ということになります。
今回の理科の入試問題を新聞でチェックし、真っ先に思い出したのは、全国学力・学習状況調査です。
全国学力・学習状況調査は、毎年小学6年生と中学3年生が受けるテストで、基本的には国語と算数・数学の2教科で行われます。ただ、平成24年度と平成27年度は、理科を追加した3教科が実施されています。
全国学力・学習状況調査は、「活用」に関する問題に重点を置いた形式を取っているため、理科であれば実験に対する結果や考察、数学であれば日常生活への応用がかなり意識された問題となっているのです。
「なぜ今年変更があったか」と言われれば、「今年の受験生が全国学力・学習状況調査で理科を受けているから」というのが1つの理由でしょう。
(それでもあまり納得がいかない変更ではありますが)
また、先に発表になっている、大学入試に変わる「評価テスト」の試作もまた
実験重視の傾向が見られていました。
これもまた、入試理科の問題に影響があったことは捨てきれません。
来年度の理科は要注意
正直言うと、今年の理科の問題は見かけ倒しでした。
実験活用型の問題、とはいってもその精度は低く、大問2の問題は「よくある暗記系記述」の問題ばかりになってしまいました。結果、昨年の平均点よりも今年は2~3点アップする可能性が高い、と私は踏んでいます。
実際は平均点と結果分析の発表待ちですが、その結果を踏まえて、来年度入試はとてつもなく難しくなる危険をはらんでいると見ていいでしょう。
(※実際、平成29年度から理科はしばらく「最も難しい教科の一つ」として君臨していました。)
内容を大きく変更した場合、問題作成者側は難易度の調整がどうしても難しくなります。前例がないからです。
ですから、1年目は今までの感覚で作ってみて、次の年に生かします。実験的に、という意味ではなく、今までの方向性を残しつつある面で大胆にチャレンジする、という意味。
でも今年は、それがうまくいかなかった。結果、簡単な問題になってしまったのではないかな、と思っています。
問題を作る側は思います。「もう少し突っ込んで問題を作ってもいいんだな」
この「もう少し」のさじ加減を間違えると、とてつもない難しさになってしまうわけです。
平成29年度入試を受けるあなたは、この可能性を頭に入れて、勉強することを考えなければなりません。
(※令和3年度入試を受けるあなたもです。)
全国学力・学習状況調査が実験・考察重視を標榜する以上、今から「知識型問題」に逆戻りするとは考えられません。
今から対策を始めるのなら、まず今までの実験をきっちりチェックすることから始めます。
教科書には、実験の方法・結果・考察が1つにまとめられています。「考察」がきちんと答えられるかどうか。これを一度すべてチェックするのがよいでしょう。
用語を暗記することは当然ですが、実はそれよりも「考察の暗記」が、分かれ道になるかもしれません。
がんばりましょうね。