広島県教育委員会は、9月に令和4年度(今年の中学3年生)の公立高校の定員を発表しました。
定員とは、選抜Ⅰ(推薦入試)と選抜Ⅱ(一般入試)の合計合格者数のことで、2割から5割が選抜Ⅰ、残りが選抜Ⅱの定員となります。
8クラス分定員増の背景
令和3年度入試で定員数の削減が行われた公立入試ですが、令和4年度入試では8クラス分も増加しました。
安芸高校・呉昭和高校の募集停止にも関わらず、です。
東広島地区は、昨年定数が削減された賀茂高校の定数が増加、一昨年に戻りました。
福山地区に至っては、とくに募集停止の高校もないのに、200人の大幅増です。
定員が増えると、『合格するのが楽になった!』と喜ぶのが世の常です。
でも、今年大きく定員が増えた理由は何なのだろうか、これを掘り下げてみないと、これがぬか喜びになってしまいますよね。
「定員が増えたら、志望する生徒が増えるから厳しくなるよ」なんて定説も、なんだか説得力をもちません。「40人も志望者増える?」みたいな。
なので、調べてみることにしました。
高陽東高校と安芸府中高校、呉三津田高校の定員増の背景
この3つの高校の定員増加は、安芸高校・呉昭和高校の募集停止の影響であると考えられます。
安芸府中高校は、近隣中学校の進学先として高い率を誇っています。
高陽東高校も、安芸府中高校とまではいかないまでも、進学先の一つとして確立しています。
安芸高校の「受け皿」として、この2校の募集定員を多くしたと考えるのが自然ですかね。
受け皿としてはちょっと増加数が多いですがね。
一方、呉三津田高校の場合は、「昭和の受け皿が三津田?」と首をかしげる方も多いかもしれませんね。
なんせ偏差値帯がちょっと違いすぎるので。
呉昭和高校の「受け皿」としては、以前調べたところによれば熊野高校が挙がっていました。
しかしながら、呉昭和高校と熊野高校は地区が異なります。だから、熊野高校を増やすことは難しい。
そこで、呉昭和に地理的に近い呉三津田高校の定員を増やした、というのが内情かな、と思っています。
その他の高校の定員増の背景
それでは、受け皿でもないほかの高校の場合はどうか。
定員が増えた理由として考えられるのは、受験が見込まれる生徒の増加です。というか、ほかの部分はそれしか考えられません。今年だけ私立中学校の生徒が少なくなっているわけはないし、昨年だけ多くなっていることもまずありえない。
でも、この少子化の時代に受験する生徒が増えることなんてある?と思って、調べてみました。
使う資料は、広島市・東広島市・福山市の年齢別人口です。
2021年の3月末の段階で、今「15歳」の人は高校1年生の代、「14歳」の人は中学3年生の代です。
この人数をもとに考えます。
これは面白い結果が出ました。
広島市
2021年3月末の15歳の人数 11,308人
2021年3月末の14歳の人数 11,465人(+157人)
東広島市
2021年3月末の15歳の人数 1,762人
2021年3月末の14歳の人数 1,859人(+97人)
福山市
2021年3月末の15歳の人数 4,160人
2021年3月末の14歳の人数 4,480人(+320人)
実際には、私立中学の生徒や市外の高校を受験する組なども存在するので、この人数が全員その地区での高校を受験するわけではありません。
とはいえ、同地区で公立高校を受験する可能性のある生徒が、100人~300人増えるのであれば、定員を増やしておく必要がある、と県教委が判断するのは当然のことかと思われます。
実際、福山市は5つの高校で+200人の定員変化、東広島市は賀茂高校で+40人の定員変化。
広島市と周辺は、5つの高校で定員変化していますが、先ほど書いた通り、高陽東と安芸府中が「募集停止の余波」と考えると、3つの高校で+120人の定員変化でつじつまが合います。
このように、定員増には何かしらの「受験生増が見込まれる」理由が存在するものですから、定員増=門戸が広がって楽になる、はたぶん楽観的過ぎると思います。
改めて、一次情報に向き合う大切さ
はじめは、「定員が増えたから楽だ!」と思っていたはずの受験が、周りの雰囲気が変わるにつれてプレッシャーになることはよくあります。
ただ、その雰囲気が『実はただの噂だった』ということは多々あります。
この時期になると、「どこかの塾の先生」が発したと言われる謎の情報が流れます(私ではありません)。
今年は、○○中学校のほとんどは△△高校志望らしい、とか
今年は、××高校の■■科の人気が高いらしい、とか。
『それどこ情報?』みたいな話はたくさん登場してきます。
ちょっと強めに言っておきますが
その情報、99%ウソ情報です。裏付けがあるわけではない、ただの噂です。
裏付けと言ってもせいぜい周りの30~40のサンプルの情報。
広島県の中学3年生は約1万人いますから、1%にも満たないサンプルの情報で、振り回されてはダメです。
信じてしまった方を責めているわけではないです。うわさを流した人が悪いわけでも回した人が悪いわけでもありません。たぶん全員、善意でお話しされています。
善意の方がタチ悪いときもありますから……倍率や受検内容に関することは、ほとんどこれだと思ってください。
志願者数・倍率は、広島県教育委員会が発表するものだけを信じます。それ以外は、聞き流してください。
この話の着地地点は、いろいろ周りは言うけれど、自分を信じてがんばりましょう!です。
定員増は、単に中学生が増えたから。このくらいの気持ちで大丈夫です。あまり意識しないように。